古代日本でも自然をご神体と見立て信仰する文化があり、それに山や巨大な岩を用いるなどします。
対してアイヌ民族の場合は、ある1つの植物に細かくカムイを見立てるなどの違いがあります。
カムイたちを調べていくと、アイヌ民族の生活が分かることはもちろん、アイヌの方々の知見も同時に得られて面白いものです。
以前にもカムイを取り上げた記事を掲載しておりますので、そちらも合わせてご覧ください。
カパチリカムイ
カパチリが「鷹」という意味を持ち、
鷹のカムイです。
カパチリ、カパチリシチカプという言葉自体には、「オオワシ」または「オジロワシ」という意味があったと伝わっています。しかし、どちらの意味が正しいのかは定かではありません。
この後に紹介する伝承の中では「オジロワシ」を意味しており、
カパチリシチカプといえば「オオワシ」であることが知られています。
アイヌの方々も鷲の姿に判別が付いていなかったのかもしれません。
特徴
カパチリカムイは数多くいる中でも、大変偉いカムイとして信仰されていたそうです。
人に幸をもたらす神様として伝わっており、ワシを捕まえた際には神の国へ魂を送り返すために
儀式を行うほど。その儀式は丁寧でなければ、運気が悪くなると考えられていました。
他にもアイヌ民族の鷹にまつわる伝承の一つに『ルルパの少年』があります。
ざっとした内容:
鷹の夫婦(オジロタカ)がカムイたちより、ある災難にあったコタンに残された子ども(主人公)の世話を任せられます。鷹の夫婦は責務を全うし、最後は育て上げた主人公に話を後世に語り継ぐように言い残します。
伝承の中でも、鷹/カパチリカムイは人を見守ってくれる存在として捉えられているようです。
参照
カパチリ – アイヌと自然デジタル図鑑
https://ainugo.nam.go.jp/siror/book/detail.php?book_id=A0339
カムイイケネ(ハンノキ)
ケネが「ハンノキ」という意味があり、
カムイイケネはミヤマハンノキ(植物)のカムイです。
ミヤマハンノキとは、高山にも海岸部の湿原にも生息しており、
高さは育った環境によって高くもなり、低くもなります。
痩せた土地でも育ち、しかも生息している間に周辺の土壌環境を肥やしていくという
凄まじい木なのです。
特徴
このミヤマハンノキは、アイヌ民族の生活の中では、
木幣という海にいるカムイたちへ祈りを捧げるための用具を作るために必要としていました。
そのためカムイとして祀っていると考えられます。
では、なぜミヤマハンノキを用いているのでしょうか。
それはミヤマハンノキの樹皮からは綺麗な赤色が出ることから、
魔除けとして染料に用いたり、また樺太で暮らしていたアイヌ民族は、ハンノキの木の枝で魔除けの人形を作り子供に持たせていたそうです。
魔除けの効果がある清いものとして捉えられていたのかもしれませんね。
ミヤマハンノキの仲間、ヤシャブシは実や樹皮は染料として現代でも用いられています。
参照
アイヌと自然デジタル図鑑
https://ainugo.nam.go.jp/siror/dictionary/detail.php?page=book&book_id=P030
シリカプカムイ
「シリカプ」とは「メカジキ」という意味があり、
シリカプカムイはメカジキのカムイです。
メカジキはアイヌ民族にとって食糧の1つ。
アイヌ民族の間でも美味なものとして知られていたそうです。
特徴
シリカプカムイを捕まえた際は、儀式を行って魂をカムイの国へ送り出します。
カパチリカムイの時と比べると、シリカプカムイも高位のカムイ という訳でもなさそうでした。
カムイから食べ物を賜ったと受け取り、そのため丁寧に送り出していたのかもしれません。
メカジキは力がある魚であり、アイヌの方々が縄をかけて捕えても、
乗っていた船ごと、どこまでも引っ張られてしまうこともあったそうです。
しかし暴れないメカジキもいたそうで、それはなぜかというと、
木幣が欲しがるからそうです。
木幣とはアイヌの方々が安全に漁をするために必要なものだったのです。
なぜ木幣を欲しがるのかは調べが付きませんでした…。
参照
メカジキ-アイヌと自然デジタル図鑑
https://ainugo.nam.go.jp/siror/book/detail.php?page=book&book_id=A0038
最後に
いかがでしたでしょうか。
普段生活するだけでは知り得ないであろう動植物について、アイム文化を通じて得られた物があったことを願います。
私はアイヌ文化から、『生活に関わる自然全てに感謝する』という考えを学びました。
ぜひアイヌ民族の考えを創作にも活かしてみてください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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